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デジタルフォントにギザって、ビットマップフォントじゃあるまいし……と思っている人は少なくないはずです。
しかし、ギザはあります。

実物でチェックするのがいいだろうと思います。
そんなもんねぇよ、って人のほうが多いはずですが、いや、あるんです。



堀内印刷の書体見本帳をご覧頂けます。(PDFファイル:37.74MB) 【堀内印刷所】



老舗の印刷会社、堀内印刷所さんでは、自社書体を含む各種書体について、見本帳を作り、そして、PDFで公開されています。ちなみに自分は印刷板も持ってるけれども、PDF版はそれはそれでありがたい。

120621_SKGiza_2

しかもフォントはエンベッド。もちろん、写研フォントもエンベッド。素晴らしい。
なので、実質的に生データに近い状況で、確認できてしまうわけです。セキュリティはかかっているので、実質的には画面閲覧とプリントアウトくらいにしか利用できないわけですが。

まずは石井特太ゴシック(EG-KL)のところを拡大してみると……

120621_SKGiza_3

文字がやわやわしているのがわかるかと。ちなみに「太ゴシ」の文字はおそらくBG-KLだと思いますが、そこもやわやわしてる。それが「ギザ」と思っていいだろうと思います。



もっとわかりやすいのが以下。

120621_SKGiza_4

我らが秀英明朝です。SHM万歳。しかし、なんかおかしい。

こっちの場合、文字がかっくんかっくんしている。明朝体なのに。カーブが必要な部分なのに。かっくんかっくん。
これもギザです。



なぜこんなのが起きているのか。単純な話。

写研のデジタルフォントは、電算時代のデジタルフォントであり、80年代後半から90年代にかけてデジタル化されたものが多く、そして、その頃の出力先は紙であり、フィルムであった。あまり解像度の高くない。
ついでに、コンピュータの処理速度も容量も多くない、ので、1文字あたりのメッシュ数、つまりは座標情報もそれほど持っていないはずなんです。
作り手の甘さもあるにはありますが、紙やフィルムに出し、それを製版し、印刷することで、エッジは甘くなります。アナログ処理を繰り返すことで、そのまま出ることはなくなったわけです。

で、そのクオリティのままデジタル化して、デジタルのまま出したり、CTPとして出すのであれば……そりゃ、エッジはそのまま出ます。結果「ギザが出る」と。



このあたりは、別に電算書体だけではなく、写真植字の文字盤でも似たようなことをやってます。詳しいことを知りたい場合は「写植の時代展」のパンフを買うとそこそこ書いてあったり。



もっとも、座標情報の少なさやエッジの処理そのものだけが書体の出来・不出来を決める要素にはならないので、あくまでも、出力状態と結果の問題でしかないだけです。
実際、ヒラギノのWindows版TrueTypeは2048メッシュ、OpenTypeは1000メッシュですが、別にそれが優劣にはなっていない。別の要素によってOpenTypeが今ある状態。比較としてはあまりよくないけどそういうもんです。(※)



まあ、修正は必要なんだとは思いますが、真面目にグリフ単位で修正してるといつリリースになるかわからん気がします。データではない、紙ベースの字母が残ってれば、そっちから起こしたりとか最新技術使ってグリフ自動生成・調整したほうがいいような気はする。



#(※)について補足しますが、これはTrueTypeだから悪い、というわけでもないです。ヒラギノTrueTypeは、スクリーン製DTPソフトとの利用を想定したものなので、普通にオフセット印刷に耐えうる、PostScript利用でも一切遜色のないフォントです。2000年頃のWindows DTPではデファクトスタンダードだった。ちなみにイワタやモトヤのTrueTypeにも同じことがいえます。どちらかというと、印刷技術におけるAdobe製品・技術の台頭、という要素による影響が一番でかい。

#某View Fontは50メッシュです。使いもんにならん。が、今でも使おうと思えば使える有様。しかし役にはたたん情報だな……。

#どうでもいいんですが、このギザの情報流した会社さん、写研のアウトラインサービスやってるんですが、NET-DTPのシンカさん情報からすると、果たして大丈夫なサービスなんだろうか、とか思うんですが。あとこのニュースだと写研フォントを電子書籍に採用、とかやってるんですが、それって本当に電子書籍につかっていいシロモノなのか、っていう、いろいろと疑問満載なニュースだったりします。うーん。

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コメント

>> おがたさん

いや、思いっきり失念してました。というか、これも勢いで書いたこともあったりしますので。
あとそのPS版オプションはどの程度販売されたのかも気になります。

しかしそれだけみると、CTPは1995年のDRUPAで最初の発表、どころじゃなくなるんですよね……。
http://www.mdoc.co.jp/printing/ctp/index.html

実際にそれで出された印刷物も見てみたい気がします。果たしてどんな状態だったのか。
(なんとなく想像はついたりはしますが、実物はレアものなんだろうなあ、と)

電算写植でもCTPはできました

趣旨に異論はないですが、重箱の隅をつつかせてください。小野澤賢三「電算写植システムの開発-3」(http://imailab.families.jp/pdf/14/14-02.pdf)p.7によれば、〈オプションでシート状のPS版(最大400mm×560mm)に直接出力することができた〉とあり、SAPLS-N(1983年)ではCTPを実現していたようです。
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