とりあえずひとつ先に記しておくことが。
「ソフトに依存する」とした場合にも影響があって、これはAdobeのサイトにものすごい紛い的ではあるものの情報が出ていたりします。
InDesign Help / モリサワUD新ゴ コンデンス書体について(InDesign CC)
ちなみにそのタイトルの通り、モリサワUD新ゴコンデンスを前提にしているし、モリサワのサイトに記載があるFAQからもこのページにリンクが貼られていたりします、が、実際には先に記したとAxis FontのCondensedやCompressedだってこの影響はあります。
フォントデータ時点で縦横比率が1:1ではない場合(つまりいきなりフォント使い出した時点で幅が狭い状態)であれば、Adobe製品(InDesign/Illustrator)で標準で用意されている文字組みアキ量設定は利用できません。
(逆に、TB Gpthic for Condenseは利用者が変形率を指定する必要があるものなので、この影響は受けません)
で、それはあくまでもソフト依存の話。もっとも、JIS X 4051を基準に日本語組版機能を搭載しているソフトの場合、モリサワUD新ゴコンデンスとAxis Font Condensed/Compressedはほぼまともに組めないといっても過言じゃないですが。
ちなみに直接解ではないですが、Adobe製品でこれらを使うためのヒントは先日話題にも出した、「+DESIGNING」Vol.34の付録に書いてあります。
ではソフトの組版機能に依存しない方法で組版する場合、なんですが……これはこれで実は、フォントのおそらく仕様として影響するところがあるわけで。
まあそんなにたいしたことではなく、結構単純なところですが、でもベーシックな部分でもあるわけで。以下の画像がすべて。
上記はわかりやすくするために、すべて1000/1000em幅に揃えていますが、句読点及び鉤括弧の、4つの字形を並べたものです。また背面には1000/1000em幅の枠をおき、500em部にも縦ラインを置いてます(つまり500em単位で縦ラインが入れてある状態)。
一般的には、これらの字形は500em内を基準として字形デザインがされており、かつ残り500em側のアキ側には更に余白を持たせることが多いです。結果、500em幅分のアキをすべて詰めたとしても、若干の余白は残された状態になる特徴を持つものになります。
しかしコンデンス系フォントの場合、その余白は狭いです。字幅が狭いほど余白も少ない。UD新ゴコンデ50やTBゴシック C6は500em幅を超えてアキ側まで使われてしまっている、という状態でもあったりします。
となると、これらフォントを使って、たとえば「連続する約物が発生した時に字間を詰める」処理をした場合にどうなるか、という話になるんですが……それを行った結果が以下。なおこちらはオリジナルの幅を基準に組んであります。




比較のために、非コンデンスフォントも同様に処理してみましたが、コンデンス側は字形が重なったり、重ならなくてもかなり接近しているのがわかると思います。
本来、コンデンス系書体の目的は「特定の面積領域内で情報量を増やす」ことが主眼だと考えます。
ただもうひとつ、文字組での主題でもある「可読性を損なわない組み方を考慮する」ことを忘れてはいけないわけです。そもそもコンデンス系フォントは「通常フォントだと変形をかけると文字の縦画が細るので可読性が損なわれる」点を解消するためのフォントであるため、可読性を損なってしまうことはフォントの利用自体が無意味になるだろうと考えることができます。
そのうえで、約物類についても全体可読性を考慮した調整処理が必要になるわけですが、今回の結果を踏まえると、普通のフォントと同じ処理系で機械的に施してしまうと、おかしくなってしまう可能性がある……という点も注意する必要があるだろう、と。
もっとも、現状でソフトの標準設定だけではまともに利用できないので、手作業で行うか、設定をカスタマイズして利用することになるわけですけれど。
手作業の場合は目視で明らかにわかるので変なことはしないだろうとは思います。怖いのは設定のカスタマイズによる自動的調整ですが、これはこれで現状ではかなり手を加えないとできないのもまた事実だし設定を作り込む時点で確認するでしょうし……よって現状ではそんなに影響を受けないでしょうけれども。
いずれにしても気を付けておきたいところです、はい。
#もっとも、個人的には、コンデンス系フォントは幅80%未満の場合は文章組利用には不適だと思います。単行・短文利用が大前提かつ、幅が狭くなるほど文字数も減らしたり、場合によっては字間を広げて利用するべきだろうと考えます。このへんの利用想定を明文化したり、それを見越した見本をベンダー側が出してくれると有り難いとは思うんだけれども……。ただいずれにしても「使いづらいなあ」とは思います。デザインでも文章組版でもない、通常の文字表現セオリーとは異なるテクニックが必要と考えると、下手に使うと失敗しそう。
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